君と描く花言葉。
「セイジ!」
「?」
ちょうどセイジも画材を片付け始めるところらしく、話しかけるとしゃがんだままで振り向いてきた。
さっきは不意を突かれて聞きそびれちゃったからね。
っていうか、セイジのこと苗字で呼んでる人って、結構いる気がするんだけど。
私の話を遮ったことにすらきっと気付いていなかったのだろう当の本人は、若干の上目遣いで、きょとんとした顔をしている。
……つくづく不思議だよなぁ。
男子に上目遣いって、そんなに似合うものだったっけ。
明らかにどこかズレてるけど、憎めないって感じ。
「日曜日、また行ってもいい?」
「……?うん、いいよ?」
あれ?
私は、普通に次にセイジの家に行く約束をしようと思っただけなんだけど。
なんでこう、不思議な顔をされてるんだろう。
「……私、何かおかしいこと言った?」
「いや……そういう風に聞かれたの、初めてだから」
「そういう風?」
「いつ行っていい、とか。
好きなときに、いきなり来るものだと…」
「え。普通約束しない?」
「……したことない」
「嘘。友達と遊びに行く時とか……」
「幼馴染に連れ出されることはあるけど……遊ぶと、絵が描けないから」
「……遊ばないんだ」
「うん。……エリカも、好きに来ていいよ。
誰もいなかったら、多分コンビニ行ってるだけだから。
ちょっと待ってくれればすぐ戻ると思う」
「そ、そうなんだ……?
じゃあ、日曜日行くね」
「ん……」
こくり、と頷いたセイジは、また黙々と片付けに戻ってしまった。