君と描く花言葉。




「期待されるのは、みんなに認められてるってことだから、嬉しい。でも、時々嫌になる。
好きに描きたいって。
そうしたら……月曜日、エリカがニゲラを緑色に塗りつぶしてた」


「え。あ、あれは……」



急に自分の話題を引っ張り出されて、ドキッとする。


見られてたの……!?



セイジは真剣に描いてたし、見てないと思ってた……!




「エリカは俺と違って、自分の世界は求められてない。
それでも、エリカは自分の世界を描いた。
……俺は、あの絵が今まで見てきた中で一番好きだった」


「……!」



好き?


あの絵が?



上手く色が馴染まなくて、ぐちゃぐちゃで、でも、一番満足がいった、あの絵。



セイジが、ゆっくりこっちを見て微笑む。



「だから、俺も。
エリカが今日来るってわかってて、わざと違う絵を描いたんだ。
……どうかな」



……そんなの。


答えは決まってるよ。



今の話を聞かなくたって、答えは同じだ。



「いいと思う。すごく」


「本当?」


「私、セイジの絵が好き。
それがセイジの世界でも、そうじゃなくても。
だって、どれも楽しそうだから」



ついこないだまで、大っ嫌いだったセイジの絵。


明るくて、楽しそうで、希望があって、他とは違う。



それは上手いからそう見えるんじゃなくて。


セイジ自身が、心から楽しんでるからそう見えるんだ。




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