君と描く花言葉。
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「お邪魔しまーす」
ノックもせずに勢いよくドアを開けること、もう何回目になるだろうか。
見慣れた温室を通り抜け、目的のアトリエに足を進める。
一人光の中でキャンバスに向かっていた背中が、ふんわりと笑いながら振り向いた。
「エリカ。今日は遅かったね」
「お母さんに部屋片付けろー!って言われちゃって」
「片付けた?」
「見せかけだけ。ほとんどクローゼットに突っ込んで隠してきちゃった」
「帰ったら片付けないとね」
「うん、流石にクローゼット開けたら雪崩は困るからね……」
一回そのまま放置して、開けた瞬間に服が降ってきたことがある。
あれは反省した。ちゃんと仕舞おう。
……帰ったら。
「あ、この花。そろそろ水あげる頃?」
「そうだね。あとそっちもそろそろかな」
「じゃ、私も手伝うよ」
壁にかかっているセイジお手製のおしゃれなジョウロを手にとって、水を汲む。
このジョウロも、お花の世話を手伝っているうちにもうすっかり手に馴染んだ。
あれからというものの、私はセイジのアトリエには毎週通うようになっていた。
決まって毎週日曜日。
朝から来ることもあれば、今日のように昼から来ることもある。
携帯をやっとどこかから掘り当ててきたセイジと連絡先は交換したものの、特に連絡をすることもなく、自由に出入りする感じだ。
いつか話に聞いた幼馴染の亜希奈さんと、もはや同じような待遇になってしまっている。
ちなみに、亜希奈さんとはまだ会ったことはない。
最近はよく学校での愚痴を言いに来ているそうだけど、亜希奈さんは夜に来ることが多いみたいで、日曜日の昼間にしかいない私とは時間が噛み合わないみたいだ。
愚痴がうるさい、とセイジが愚痴っていた。