君と描く花言葉。



「昼は?もう食べた?」


「あ。……忘れてた」


「またぁ?もう、水やりなんてしてる場合じゃないでしょ。早く食べて」


「ん……。じゃあ、あとはよろしく」


「はいはい」



今でもご飯の食べ忘れが多いセイジを温室から追い出して、水やりを続ける。



ここの花のことも、だいぶ色々わかってきた。


ユリにマーガレットにかすみ草でしょ、それからそれから……あ、そうだ。


この温室には、例の『エリカの花』もあるんだ。



紫とピンクの中間みたいな色の小さな花が、群れるようにくっついて咲いているエリカ。


イメージしていた花とは全然違ってびっくりした。


もっと、1つだけの花がポツンと咲いているような、『孤独』な感じの花だと思っていたのに。



『孤独、寂しさ』なんてセイジに言われた時は、本当にどうしようかと思ったけど、今思えばそれが初めて話す機会だったんだもんなぁ。



まさかこんなに仲良くなるとは思ってなかったよ。



ここの居心地が良すぎて、セイジと話してると落ち着きすぎて、すっかり常連になってしまった。



空になったジョウロを元あった場所にかけて、アトリエに向かう。



椅子に座ってもそもそとおにぎりを食べるセイジを横目に、私は家の中に入った。



セイジってば、また飲み物出さずに食べてる。


最初の頃は毎回コップを持ってきて、飲み物を出してくれていたけど。


たくさんの飲み物を差し入れたせいか、この家に馴染みすぎた今では私が飲み物係に任命されてしまった。



まあ、ずっとお客さん待遇されるより気楽でいいんだけど。



コップにいつものミルクティーを注いで、キッチンを出る。


色々飲ませたところ、セイジも私の一番のお気に入りのミルクティーを気に入ってくれたみたいで、最近はずっとこれだ。



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