君と描く花言葉。
「ここ。額縁とか、飾るためのものは大体この部屋にある」
「へぇ……そっちの部屋は?」
「そこは……」
額縁の部屋の向かいの部屋。
そこにだけ何故か名札がかけられているけど、裏返されていて読めない。
「……兄さんの部屋だよ」
「お兄さん?兄弟いるんだ」
「うん。もう結構前に家を出て、一人暮らししてる。
あ、違った。二人暮らしか」
「結婚してるの?」
「ううん、まだ。でも、すごく幸せそうだ」
額縁を取りながら、セイジが柔らかく笑う。
……お兄さんのこと、好きなんだなぁ。
私は一人っ子だから、仲のいい兄弟を見ると少し羨ましくなる。
兄弟がいるって、どんな感じなんだろう?
実際に兄弟がいる友達からは、『お菓子奪われる!』とか『喧嘩になる』とかって話も聞くけど。
家に常に一緒に遊べる人がいるっていうのはいいな〜って、一人っ子の身としては思ってしまう。
そんなこんな考えている間にも、私たちは再びギシギシと音を鳴らしながら階段を下りて、アマリリスの絵の元へ向かう。
丁度窓の向かい側の廊下の壁。
薄暗い中で、セイジが手慣れたように丁寧にキャンバスを額縁に入れてくれた。
それを私が受け取って、セイジのアマリリスの隣にかける。
それから、2人で頷き合って、目の前のカーテンの裾をそれぞれ持って。
「せーの!」
掛け声に合わせて、一気に開いた。