君と描く花言葉。




「ここ。額縁とか、飾るためのものは大体この部屋にある」


「へぇ……そっちの部屋は?」


「そこは……」



額縁の部屋の向かいの部屋。


そこにだけ何故か名札がかけられているけど、裏返されていて読めない。



「……兄さんの部屋だよ」


「お兄さん?兄弟いるんだ」


「うん。もう結構前に家を出て、一人暮らししてる。
あ、違った。二人暮らしか」


「結婚してるの?」


「ううん、まだ。でも、すごく幸せそうだ」



額縁を取りながら、セイジが柔らかく笑う。


……お兄さんのこと、好きなんだなぁ。



私は一人っ子だから、仲のいい兄弟を見ると少し羨ましくなる。


兄弟がいるって、どんな感じなんだろう?



実際に兄弟がいる友達からは、『お菓子奪われる!』とか『喧嘩になる』とかって話も聞くけど。


家に常に一緒に遊べる人がいるっていうのはいいな〜って、一人っ子の身としては思ってしまう。





そんなこんな考えている間にも、私たちは再びギシギシと音を鳴らしながら階段を下りて、アマリリスの絵の元へ向かう。



丁度窓の向かい側の廊下の壁。


薄暗い中で、セイジが手慣れたように丁寧にキャンバスを額縁に入れてくれた。


それを私が受け取って、セイジのアマリリスの隣にかける。



それから、2人で頷き合って、目の前のカーテンの裾をそれぞれ持って。




「せーの!」




掛け声に合わせて、一気に開いた。





< 82 / 165 >

この作品をシェア

pagetop