君と描く花言葉。
……そこに描かれていたのは、小さなスミレの群れだった。
スミレと言ったら、紫色のイメージなのに。
成宮くんのスミレは、見事なほどに赤かった。
赤が基調の、暖色系の色に包まれたスミレ。
おかしい。おかしいよ、そんな色。
なのに、なんで。
なんで、それが紫色のスミレだってわかるんだろう?
少し横にずれると、成宮くんが見本に使っている、籠に入ったスミレの花束が見えた。
その紫色のスミレは、間違いなく絵の中の赤色のスミレと同じものだ。
悔しいけど、そうとしか思えなかった。
「なんで……って。
俺は、見てるものをそのまま描いてるだけ」
「マジかー……やっぱ天才と凡人じゃ、見え方から違うんかな。こんな変な色なのになー」
「おかしいかな、俺の絵」
「おかしくねーからおかしいんだよ!!
普通、おかしくなるっての、そんな色」
「……そうかな」
「そうだよ!」
成宮くんは、みんなの言っていることがよくわからないとでも言うように、微かに首を傾ける。
その仕草が、やけに嫌味に見えて、ムッとする。
そうだよね。あなたにとってはそれが普通なんだよね。
あなたにとって普通じゃないのは、それができない私たちの方なんだよね。
その才能を鼻にかけず純粋なだけだと言わんばかりの態度が、逆に私の神経を逆撫でする。