へたくそ
「あー、もう無理・・・」

飲み終わったグラスを私に渡して、またふとんに潜り込んで目を閉じる彼氏。
私は、グラスをキッチンで洗ってから、またベッドの横に腰をおろす。

私の気配に気付いた彼氏が、うっすらと目を開けた。
焦点が定まってないような、ボーッとした目。それでも、私をじっと見ているので、何か言いたい事があるのかと問いかけてみた。

「ん?」

「・・・お前がいてくれてよかった・・・」

普段の彼氏からは、きっと一生聞けなさそうなセリフ。
恥ずかしくって、でもそう言ってくれた事が嬉しくて。

あー! 不謹慎かもしれないけど、もう無理!!

目の前にいる彼氏が、無性にかわいく見えた。

ギューってしたいな。

でも、彼氏はまた目を閉じてしまった。

うーん・・・。

目の前にいるのは、体調が悪い彼氏。
ボーッとしていたし、今はきっと眠る寸前。

ジャマしちゃダメだよね。

伝えようがなくて、込み上げてくる気持ちを持て余す私。

少しすると、彼氏から小さな寝息が聞こえてきた。
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