この空を羽ばたく鳥のように。
私は怒りで平常心が吹っ飛びそうなところを、拳を握りしめてようよう堪えた。
「体調を崩されたか、ですってえ!? 母上はね、喜代美の体調にひとかたならぬ注意を払っているのよ!?
けれどあいつはどうしたって、太るより背のほうへ栄養がいっちゃうんだから、しかたないじゃない!!
それによ!実家に帰らないのだって、本っっ当にあいつが行かないって言い張ってるだけでっ!
うちの両親が禁止している訳じゃないんだからねえっっ!!」
どんなに彼女より年上でも、私だってまだまだ十六の小娘。大人になりきれてない。
「ばっかやろお!」と、締めくくりに罵倒してやりたかったが、
そこはそれ、私の性格を熟知しているおますちゃんに口を塞がれ不発に終わった。
「はいはい。ここは往来。外聞を憚るべし。少しは慎みなさい」
「むぐぐ……」
肉厚の大きな手から解放されると、急いで新鮮な空気を吸い込む。
そして大きく息を吐くと、おますちゃんに小さく「ありがと」とつぶやいた。
確かにそうだ。ここは往来。
誰が聞いていて、どこにどのように伝わるか知れたもんじゃない。
おますちゃんが止めてくれてよかった。
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