この空を羽ばたく鳥のように。




 つられたのか、おますちゃんも鼻息荒くため息を落とす。



 「まあさ、あんたの気持ちもわからないでもないわよ。
 けど、弟君だって望んで養子になった訳じゃないんだからさ。そこんところ、ちゃんと考えなさいよ」

 「………」

 「いくらなんでも、大切な跡取り君をあいつ呼ばわりは良くないんじゃない?」



 自然、口が尖ってしまう。



 「……おますちゃんは、あいつの味方なの?」

 「さあね~?私だって女だもの。友達より恋を優先させちゃうかもね?
 それに誰だって、いつまでもぶすくれてる陰鬱な娘より、眉目秀麗な少年を選ぶわよ」

 「……裏切り者お」



 おますちゃんは時に、冷たいと思わせるほどさっぱりしている。
 けれども言いにくいこともズバッと言う彼女を、私は尊敬し信頼もしている。

 彼女には裏表がない。口先だけで同情してくれる人なんかよりよっぽどマシ。



 そんなおますちゃんは私をサックリ斬ってくれたあと、救いの手を差しのべてくれた。



 「まあそんな落ち込みなさんなって!お昼食べたらうちへ遊びにおいでよ!
 あんたの愚痴、ちゃあんと聞いてやるからさ!」

 「おますちゃん……ありがと」



 肉厚の大きな手でバシンと肩を叩かれ顔をしかめるも、
 私はその申し出にありがたく乗ることにした。










 ※陰鬱(いんうつ)……陰気でうっとうしいさま。また、気持ちがはればれとしないさま。

 ※眉目秀麗(びもくしゅうれい)……容貌、顔かたちがきわだってうるわしいこと。


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