この空を羽ばたく鳥のように。
――――ねえ、喜代美。
私達も、お互いを補いあいながら過ごしていたんだね。
喜代美にないものを私が埋めて。
私にないものを、喜代美が埋めていてくれたんだね。
支えあって、労りあって。
互いを思いやり、愛しあう。
喜代美は私と、そんな夫婦になろうとしてくれてたんだね………。
「父上……」
未熟な心でよいのだと知って、喜代美も胸を衝かれるものがあったのだろう。
彼は声を詰まらせる。
「しかしだぞ、喜代美。無断外出は金輪際してはならぬ。
よいな。家族みなが心配するからの」
念を押すように、そこだけは厳しい口調で父上はおっしゃった。
「はい……ありがとうございます……」
頭を深く下げているのだろう。
喜代美の声はくぐもっていた。
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