この空を羽ばたく鳥のように。
それでも、伝えればきっと分かってくれる。
そう信じて、話を切り出した。
「あの……ね。昼間のことなんだけど」
「昼間……」
「そう。あの時は気が動転して頷けなかったけど、あれからよく考えたの」
私は一度言葉を区切ると、深く深呼吸する。
そして心の中で繰り返した言葉を告げた。
「よく分かったの……。私は喜代美が何より大事。
だから一緒に、この家を守り立てていこう」
声は 震えていた。
微笑んだつもりの表情は、こわばっていた。
想いを告げたことが恥ずかしくて、私は目を伏せた。
顔が、身体中が熱い。
喜代美の眉が微かに上がる。
でもすぐに冷めたまなざしをこちらに向けた。
「それは私と夫婦になっても構わないということですか」
顔をあげる。その問いかけが卑屈に聞こえて、思わず首を振る。
「そんな言い方しないで……。私は喜代美と夫婦になりたいの。本当にそう望んでるのよ」
私の真意を推し量るような視線を放つその顔が、途端に苦く歪む。
そしてやり場のない怒りを吐き出すかのように、大きく大きく息をついた。
「……そうやって私は、いつもあなたの行くすえを妨げていたのですね」
※卑屈……必要以上に自分をいやしめて人にへつらうこと。いじけて人にへりくだること。
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