この空を羽ばたく鳥のように。




 それでも、伝えればきっと分かってくれる。
 そう信じて、話を切り出した。



 「あの……ね。昼間のことなんだけど」

 「昼間……」

 「そう。あの時は気が動転して頷けなかったけど、あれからよく考えたの」



 私は一度言葉を区切ると、深く深呼吸する。
 そして心の中で繰り返した言葉を告げた。



 「よく分かったの……。私は喜代美が何より大事。
 だから一緒に、この家を守り立てていこう」



 声は 震えていた。
 微笑んだつもりの表情は、こわばっていた。

 想いを告げたことが恥ずかしくて、私は目を伏せた。
 顔が、身体中が熱い。


 喜代美の眉が微かに上がる。
 でもすぐに冷めたまなざしをこちらに向けた。



 「それは私と夫婦になっても構わないということですか」



 顔をあげる。その問いかけが卑屈(ひくつ)に聞こえて、思わず首を振る。



 「そんな言い方しないで……。私は喜代美と夫婦になりたいの。本当にそう望んでるのよ」



 私の真意を推し量るような視線を放つその顔が、途端に苦く歪む。

 そしてやり場のない怒りを吐き出すかのように、大きく大きく息をついた。



 「……そうやって私は、いつもあなたの行くすえを妨げていたのですね」










 ※卑屈(ひくつ)……必要以上に自分をいやしめて人にへつらうこと。いじけて人にへりくだること。


< 186 / 566 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop