この空を羽ばたく鳥のように。
「え……」
「私が養子に来なければ、あなたは自分の立場をしっかり認識できた。
婿を取る立場としてあなたは八郎兄を選び、幸せになれたかもしれない。
私さえいなければ……私の将来のために、あなたの幸せが潰されるなんて、己が情けないです」
「ちがう喜代美、そうじゃないの」
喜んでくれると思ったのに。
そんなふうに自分を責める喜代美に戸惑いながら、なおも言い募ろうとすると、
それを拒むように、喜代美はくるりと背を向けた。
「私はあなたの心を曲げてまで出世したいと思いません。
お気持ちは嬉しいですが、今しばらく考えさせて下さい」
「喜代美……お願い、最後まで話をちゃんと聞いて……」
ピシャリと障子が閉められる。
喜代美からこんな扱いを受けたことなんて、一度たりともなかった。
今までの喜代美なら、どんな時でも私に向き合い、きちんと話に耳を傾けてくれたのに。
いつも優しく包んでくれたあのまなざしが、今はこんなにも冷たい。
喜代美にあんな目をされるなんて、思いもよらなかった。
喜代美……どうして?
私、ありったけの勇気を出して伝えたんだよ?
あんたが一番大事だって。
なのに どうして分かってくれないの……?
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