この空を羽ばたく鳥のように。




 「……あ!じゃあ、私のもその手紙にまぜてもらっていい?」

 「え……」



 言うなり立ち上がって縁側に飛び出すと、自室からふたつの匂い袋を手にして喜代美のもとに戻る。

 中身は以前と同じ菖蒲の香り。
 それを喜代美の前に差し出した。



 「兄君がたが出立してから、もう四月(よつき)になるでしょう?そろそろ匂いも薄れると思って、新しく用意しておいたの。
 喜代美の御守りと私の匂い袋で、きっと御利益は倍になるわ!ねっ、そう思わない?」



 弾んだ声で言うと、目をぱちくりした喜代美は顔をほころばせて頷いた。



 「そうですね。きっと御加護が強まりましょう」



 墨が乾くと、喜代美はそれを丁寧に折り畳み、ふたつの御守りと匂い袋とともに厚紙で包んだ。
 そして私と目を合わせて、にっこりと笑いあう。



 (きっとおふたりは、ご無事で戻っていらっしゃる)



 ふたりで目を閉じ、そう願いを込めた。




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