この空を羽ばたく鳥のように。
* 一 *
雨が、降り続く。
ここ二、三日続く雨で、肌寒く感じる日が続いていた。
会津を守るために戦地で戦っている兵士達は、この寒さに難儀していないだろうか。
四境での戦争は、よく雨に見舞われたという。
そのため、旧式の洋銃や火縄銃が多い同盟軍は、火薬が湿って役に立たない銃が多く苦戦を強いられた。
そんな四境の戦況は、ますます悪化の一途をたどっていた。
死傷者も相次ぎ、八郎さまだけでなく他の親戚の戦死も伝わってきた。
城下でも頻繁に野辺送りが見かけられた。
それでもそれは、負傷して軍事病院に送られたが手当ての甲斐なく亡くなられてしまった方や、戦死後 運よく城下まで運ばれてこられた方だけで、
悲しいことだけど、八郎さまのように戦いが続く遠い戦地で亡くなられた方は、家族の手で手厚く葬ることなどできやしなかった。
目や耳にするのは、みな悪い事ばかり。
誰もが胸に、不安や焦りを感じていた。
そんななか、お城から戻られた父上が、着替えを済ませたあと家人全員を呼んだ。
居間の上座に座る父上をはじめ、家族達は両脇に座る。
源太や弥助、おたかなどの奉公人は縁側に控えた。
家人達が、また悪い報せかと不安な面持ちを浮かべるなか、父上は皆の顔を見渡してから、おもむろに喜代美を呼んだ。
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