この空を羽ばたく鳥のように。
 



「あなたはわたくしに、本日はある決意を持ってここに参りましたと申しましたね。

その決意を揺るがないものにするために、わたくしと勝負し、そして勝たなければ前へ進むことができないと。

あなたのその決意とは、いったい何なのですか」



まっすぐ問われて、私も正直に答える。



「それは、この先 何が起ころうとも、立ち止まらず前を見据えてゆく覚悟です」





たとえ この戦が、どんな結末を迎えようとも。

この命尽きるまで、前を向いて懸命に生きてゆく。





決意の固さを視線に乗せると、竹子さまのまなざしが細く和らいだ。



「ならばこれで、前へ進むことができますね」



その言葉に、ハッとする。



(竹子さま。あなたさまはもしや、勝負に負けることで私の背を押してくれたのですか?)



まなざしだけで問いかける。

答えをくれるように、竹子さまは頷いた。



「わたくしも、同じ覚悟を固めましょう。
いかなる時も迷わず前を見据え進んでゆくと」


「竹子さま……」


「さよりさん。今回は負けてしまいましたが、久々に気持ちが昂(たかぶ)りました。

またお手合わせいたしましょう。今度は負けたりなどしませんよ」



竹子さまは艶やかに微笑んだ。その風情にすがすがしさが漂う。



「竹子さま……では私は、またここへ参ってもよろしいのですか?」


「もちろんです。打ちのめされたいのなら、いつでもおいでなさい」



そうおっしゃるから、その竹子さまらしい物言いに、思わず笑ってしまった。






「ありがとう……ございます」











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