この空を羽ばたく鳥のように。
 





――――私が。私さえ覚えていれば。





いつかきっと、喜代美は約束を叶えにきてくれる。





たとえそれが、今生で果たされることはなくとも。





それを悲しむことはないんだ。










――――生死を越えた、強い絆を感じた。










(ああ……私と喜代美は、けして離れることはない)





現し身は遠く離れてしまったとしても、たとえこの世から消え失せることになろうとも、魂が消滅することはない。





私の魂は、何度でも喜代美を求めるだろう。

それに呼応して、喜代美の魂は私を探してくれるだろう。








(―――ああ)








今、あらためて伝えなければと思った。





以前伝えた想いを、永遠に変わることはない想いを、その心に刻んでいてほしくて。





そう思ったら、それは自然と口をついて出た。










「喜代美……大好きよ。ずっと大好きでいるから。

私はぜったいに忘れない。
喜代美より大切な人なんて、これからもけして現れないから。

このさき……家のために誰かに嫁ぐことになろうとも、身体は他の誰かに委ねようとも、私の心にいるのはあんただけよ。

だから喜代美も、けして私を忘れないで」










喜代美が驚いて、かすかに頬を染める。



大きく見開いた瞳が、優しく……優しく細まってゆく。










「ええ……私も。私も、心からあなたをお慕いしております。

ですから、決して忘れたりいたしません」












想いを伝えた分だけ返してくれる。



いつも手を伸ばして頬に触れてくれる。



伝わる気持ちが、ぬくもりが、すべてが優しい。





(本当に―――本当に、優しくて愛しい人……)





その心地よさに安心したのか、また涙腺がゆるんで苦笑する。





「やだ……ごめん。悲しいわけじゃないの。
なんだか安心しちゃって……」





ぽろぽろと涙をこぼしながら笑う私を見つめて、喜代美もクスッと笑った。










※現し身(うつしみ)……この世に生きている身。



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