この空を羽ばたく鳥のように。




 潤んでしまう目元をごしごしこすって私は笑った。



 「喜代美……ありがとう。そんな大切なことを私に話してくれて」



 笑顔を向ける私に応えて喜代美もにこりと笑みを返す。
 けれども先ほどから垣間見える哀しい表情はまだ消えない。

 それを引きずったまま、彼は口を開いた。



 「……ただ ひとつ、お訊ねしたいことがあります」

 「なに?」



 安心してすっかり気が緩んだ私に、喜代美は哀しみを含んだ弱い微笑を浮かべた。





 「本当に私は、必要とされておりますか?」





 ドクッと、心臓が跳ねる。





 「……あっ、あったりまえじゃないの!喜代美はこの家の大事な跡取りよ!?
 父上だって母上だって、みどり姉さまだって、本当に喜代美のこと頼りにしてるんだから!!」

 「―――違います」



 どもりながらも言う私の言葉を、喜代美は(さえぎ)り首を振る。

 そして真剣な表情で、思い詰めた瞳で私を見つめた。



 「うかがいたいのは、さより姉上のまことのお気持ちです。私はあなたに必要とされているのか、それが聞きたい」



 ………どうして 私?



 ドクン、ドクン。
 心臓が やけにうるさい。


 言わなきゃ。
 「もちろんよ」って言わなきゃ。


 早く言わないと、気づかれてしまう。


 喜代美なんか実家に帰ればいいと思っていた、私の本心を。


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