この空を羽ばたく鳥のように。




 「も……もちろん必要よ。決まってるじゃない」



 言えたことに安堵して、心の中でこっそり胸を撫でおろす。
 けれど喜代美は、私を見つめて哀しく笑うだけ。



 「姉上は、嘘が下手だ」

 「……!! ほっ、本当よ!? ほんとに必要としてるわ!?」

 「私は臆病者です」



 笑みを消した喜代美がまっすぐ見つめて放つ言葉に、ぐっと胸が詰まる。


 私達はお互いを探るように見つめ合った。

 何も言えないでいる私を見つめて、喜代美が静かに口を開く。



 「……姉上のお気持ちは、薄々察しておりました。
 里心をつけさせ、養子であることを白紙に戻し、私を実家に帰らせたいと願っていることも。

 けれど今回のことは、私を気遣い起こしてくれた行動だと思いたかった……」



 言われて、ズキンと胸が痛む。


 たしかにうまく事が運べば、そうなるかもという期待はあった。
 けれど、寂しそうな心を埋めてあげたいと思ったのも本当で……。


 なんと答えたらいいか迷う私に、喜代美は重ねて問いかける。



 「私は仲間にも(あざけ)られるような情けない男です。
 それでも姉上は、私を必要としてくれますか?」



 反応を(うかが)っている。
 私の出方を見ている。


 ………ああ 喜代美は、何もかもすべてお見通しだ。


 私のつく嘘なんか、簡単に見破ってしまう。


 「必要じゃない」と言ってしまったら、喜代美は実家に帰ってしまうだろうか?
 そんなことになったら津川家はおろか、喜代美のお父上の想いまで無駄になってしまう。


 言うべきだ。たとえ嘘と見抜かれていても、個人的感情を押し殺しても言うべきだ。


 喜代美はまぎれもなく、この家にとって必要な存在なのだから。


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