この空を羽ばたく鳥のように。
「い、行こうぜ!」
生徒は襟元を正すと、他の朋輩達を促して帰っていった。
「………」
一部始終 眺めていた私は、喜代美の意外な一面に驚いていた。
(……びっくりした。喜代美ってば)
てっきり臆病者と蔑まれているから、仲間に意見も言えないほど気弱なのかと思ってた。
今の喜代美は、けして臆病者なんかじゃなかった。
朋輩達の帰ってゆく姿を見送りながら、喜代美の背中が緩む。息をついて、肩も丸くなる。
私もホッとして、肩の力を抜いた。
と、そこへ。
「あらあ、さよりお嬢さま!おひとりでお戻りになられたのですかあ?」
私を迎えに行こうと門から出てきたおたかが、私の姿を見つけて声をあげた。
(あ……っ!ヤバイ!) と 思う間もなく、その声に振り返った喜代美と目が合う。
「………!」
喜代美は大きな目を見開き、ポカンと口を開けた。
次いで一部始終見られていたと察したのか、色白の顔をみるみる赤く染めてゆく。
喜代美は口をつぐみ、真っ赤な顔をそらせておたかと入れ違うように屋敷の門をくぐった。
「喜代美、待って……」
あわてて後を追おうと、一歩 足を踏み出して下を見ると、なんと、逃げてきた蛇がちょうど私の足下近くを通過中で。
突然のあまりに、私は悲鳴をあげた。
「……ぎっ、ぎゃあああ~~っ!」
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