この空を羽ばたく鳥のように。
最終章 約束は消えない


 

令和2年(2020年)、立春―――――。



まだそこかしこに残る雪が、冴え冴えとした水面(みなも)とともに光を放つ湖のほとり。
私はそこにある柵に寄りかかり、湖で羽を休ませる白鳥の姿を目で追っていた。





べつに、白鳥が好きなわけじゃない。

湖が好きなわけでも、ここの景色が好きなわけでもなかった。





これといった目的があるわけでもないのに、なぜかこの冬の時季になると、いつも自然と足が向いて、知らずここに来てしまう。





そして私は今日もまた、バスを乗り継ぎ、ひとり湖畔に立つ。






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