この空を羽ばたく鳥のように。
お師匠さまはにこやかにおっしゃる。
「皆さん。今日から新しい仲間が増えました。まだ馴れないと思うので、よく面倒見てさしあげて。……さあ、ごあいさつを」
促され、小柄な娘さんは皆に向かって頭を下げた。
「本四之丁から通います。伴庄左衛門の娘で早苗と申します」
まるで鈴が鳴るような可愛らしい声。
顔も色白ながら頬は薄桃色で、ぱっちりとした黒い瞳が愛らしい。
化粧もほどこしていないのに華やかさがある。
歳は絶対 私より年下だろう。その微笑にまだあどけなさがあった。
しかし住まいが本四之丁と聞いて、「ん?」と思ったのは私だけではあるまい。
同じ郭内に住んでいるとはいえ、裁縫所を含む私達の住んでいる米代丁はお城のすぐ真西にあたる。
一方 本丁はお城の北側。お城に近い通りから、本一之丁、本二之丁と北に向かってだんだんと離れてゆく。
それは六之丁までだから、どちらかというと本四之丁はお城より郭境に近い。
無論ここまで来なくとも、ここより近い裁縫所は他にいくらでもあるはずなのだ。
それなのになぜ?という思いで私は首をかしげた。
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