ハイライト

「あなたが、好きなんです」

いつも困ったように笑って、決まりきった言葉をはく。
何時もと同じ場所、彼女がいない隙を狙って言い寄る《あわよくば》を狙う黒いわたしを宥めるように。

「…ありがとう。俺も君の事、好きだよ。」

またその一言で奈落の底に落とされる。
世界がまるで絶望色一色になる。白は消え濃紺と黒がまたわたしの世界を染め上げる。

ウソツキ。
その“好き”はアノヒトのような感情ではないくせに。
わたしが聞きたいのはそんな言葉じゃないのに。

「わたしが欲しいのは…
“愛”の好きです、それ以外なら、慰めのそんな言葉なら無に等しいの!
そんな優しい拒絶なら欲しくない!
例えあなたからなら酷く傷つけられたって構わない!それなのにどうして…!
どうして出会うのが遅かっただけで…っ」

耐えきれず震えを吐き出す。黒と白がまるで反転するかのようにチカチカ踊り出す。

この世は不条理で溢れかえっている。
それさえも貴方は、だからこそ人生は薔薇色に輝く と謳うのでしょうね。
わたしには生まれ変わったとしても出来ない芸当だ。だってそんな事片鱗でさえ思えない。

「泣かないで、俺には君の流す涙を拭って抱き締めてあげる事は出来ないから。

…彼女を愛しているから。」

じゃあどうして、震える肩を抱くの?
酷いひどいヒドイ!!これではいつまでたったって期待してしまうじゃない。

「それでもわたしは…っ」

《誰よりも 何よりも 貴方を愛しているのに》

その先が口に出せずただ子どものように駄々をこねて、あなたに縋って。

叶わない恋慕に必死な形相、どこか遠くでそれを、何かがその姿を指を指してせせら笑う。
その何かはきっと〝わたし〟なのだ。
< 2 / 3 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop