いつか、星の数よりもっと
緋咲が沙都子からのメールを受け取ったのは14時過ぎ。
自宅まであと5分というところだった。
車のドアポケットに入れていた携帯がピルルルルと鳴って、即座に通知を開く。
違反切符を切られるかもしれないが、構っていられない。
前方と手元を交互に見ながら開いたメールには、
『四段昇段が決まりました!』
とあった。
「あ……やばい。どうしよ、どうしよ」
目を開いて前を向いているのに、あふれる感情で視界も曖昧になる。
赤信号で止まったとき、謎の焦りから青になる前にアクセルを踏んでしまい、すぐにブレーキを踏み直した。
頭の片隅でこのままでは事故を起こすな、という自覚はあったので、目についたコインランドリーの駐車場にとりあえず駐車して、そこでメールを改めて確認した。
『四段昇段が決まりました!』
『四段昇段が決まりました!』
『四段昇段が決まりました!』
何度見ても無機質なはずの文字が、熱を持って伝えてくれる。
「きゃああああああ!!! やったーーーー!!! やったーーーー!!!」
ドタドタ足を踏み鳴らしたら車が揺れた。
暴れ過ぎて何度かクラクションも鳴らしてしまう。
通りを歩く人が、不審な目を向けて車の前を通過して行った。
ネットには、まだ何の情報も上がっていない。
三段リーグは一日に2局指すため、すべての結果は出ていないが、貴時は一局目に勝って二位以上が確定したのだろう。
「トッキー、おめでとう! よかった~。本当よかった~~~~~」