不埒な先生のいびつな溺愛 〜センシティブ・ラヴァーズ〜
彼は私に欲情しない
私・秋原美和子(あきはらみわこ)はすでに、少々この関係に疲れていた。
作家・久遠隆行(くどおたかゆき)は、今日も届けた資料を読みふけり、時折、差し入れのモンブランに手をつける。
私と彼が付き合うまでの過程を思い返すと、意外と壮大というか、この気難しい彼からは考えられないほどに、情熱的な想いをぶつけられた気がする。
……彼は十二年、私に片思いしていたというのだから。
「久遠くん。執筆は順調?」
「……ああ」
私はもう、彼を“先生”とは呼ばない。口をついてついそう呼んでしまうと、彼は反射的に目を細め、傷付いた表情をするのだ。
彼の“恋人”になってから、二ヶ月。
久遠くんは相変わらず、私に手を出そうとしない。
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