不埒な先生のいびつな溺愛 〜センシティブ・ラヴァーズ〜
しかし、途端に、反抗的な気持ちも芽生えた。
私は充分久遠くんを愛しているし、足りない部分があるのはむしろ彼の方だと思い出したのだ。

彼は私に触れてくれない。さっきの失礼な女は抱いたくせに、私はそれに及ばないということだ。

そう考えると、私も冷静ではいられなくなった。私はあの女に決定的に負けている。久遠くんに欲情してもらえないという部分で。

「……美和子?」

考えるほど、マキアートの甘さを感じなくなっていった。むしろ苦いくらい。
黙り込んだタイミングが悪かったせいもあり、久遠くんは不安げに私を覗き込むが、今度はきちんと返事ができそうになかった。

「美和子っ、怒ってるのか?」

「……別に」

「怒ってるだろ!」

別に怒っていることを隠す気はなかった。彼を少し困らせたいだけ。
「私に欲情してくれないの?」などとは口が裂けても聞けないから、こうして態度で抗議するしかないのだ。
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