不埒な先生のいびつな溺愛 〜センシティブ・ラヴァーズ〜
「……本当に、たまたまだからね」

結局はこうして、情けない言い訳を始めるしかなかった。
久遠くんに許しを乞うように、彼の髪を同じタオルで拭いた。この十分、おそらく彼も体を拭かず、冷やしたままだったのだろう。触れた頬が冷たくて、私は思わず手を引っ込めていた。

「……美和子」

彼はされるがまま、呆然と名前を呼んだ。

「ん?」

「最初に約束したこと覚えてるか。付き合うなら、俺のこと一生捨てるな、俺はお前にそう言った」

ゴクリ、と喉がなった。
もちろん。忘れられるわけがない。あんなに情熱的な告白。

「……覚えてるよ」

「お前、あれを守る気あるのか……?俺のこと嫌いになったって言って、それですぐあの男とまた会いやがった。そんなの俺のこと捨てたも同然だろ!嘘つきじゃねぇか!」

「ちょ、ちょっと待ってよ。嫌いになったなんて、私、言ったことないでしょう?」

「俺といると疲れるって言っただろ!」

しまった……。あのつい口からポロリと出た何の気もない言葉が、彼をずっと苦しめていた。ただあのときちょっとだけ久遠くんを困らせたかっただけなのに。
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