不埒な先生のいびつな溺愛 〜センシティブ・ラヴァーズ〜
トイレの扉の前に膝をついて座ってみた。鍵は閉められていて、隙間から光が漏れている。間違いない、ここにいる。

トイレに行きたくなったから中断したということ?えぇ、あのタイミングで?

「美和子………」

──え。
中から、久遠くんの声がしている。聞き間違えじゃなければ、掠れるような声で私の名前を呼んでいた。

「美和子、美和子っ……」

えっ、えっ……。ちょっと待って……。

トイレに籠って何をしているのかやっと検討がつくと、まるでお風呂上がりのときのように体が熱気に包まれた。無意識に、両手で頬を覆ってみる。嘘みたいに熱い……。

「美和子っ………」

久遠くん……。
目の前に私がいたのに、そこで、ひとりで……?

私がちゃんと欲情の対象になっているということは、この状況を目の当たりにしている今では疑いようがない。私は勘違いをしていた。

もしかして、今までもそうだったのだろうか。私に欲情したのにそれを彼がひとりで終わらせてしまうことは、もしかしてこれが初めてじゃなかったり?
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