不埒な先生のいびつな溺愛 〜センシティブ・ラヴァーズ〜
私は終わるまで待とうかと思った。でも待てないと思った。待って最後に打ち明けるのは、あまりにも彼を羞恥に追い込むと思ったからだ。「黙って見てたのか」と真っ赤になって絶望する久遠くんの顔が容易に思い浮かぶ。

それに、これ以上時間をあけたら私も気まずくて逃げてしまうかもしれない。見なかったことにしたら、それこそこれから話し合う機会を永遠に逃すことになる。

「……………久遠、くん」

勇気を出して、トイレの扉に声を掛けた。
中では私の名前を息ごと飲み込む音がして、衣擦れの音もピタリと止まった。

私も下着を履いていないことを咎められるだろう。でも、彼のほうはそれ以上だ。私よりずっと恥ずかしいはず。

「………えっ」

「ご……ごめん。トイレ入ろうと思って……」

「あっ、えっ、み、美和子っ……!?ま、待てっ」

鍵は閉まっているのだから、慌てて整えなくてもいいのに。中から聞こえる音で、今の彼の状態が鮮明に想像できた。

「……久遠くん。パンツ履いてなくてごめん」

もう私から正直に言った。これ以上は可哀想だ。
この一言で、さっきまで私が寝たふりをしていたこと、ここで久遠くんが何をしていたかも分かっていること、どちらも伝わっただろう。
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