不埒な先生のいびつな溺愛 〜センシティブ・ラヴァーズ〜
「………なっ……」

ガタン、と音がした。多分、久遠くんが崩れ落ちた音だ。
彼の顔も予想できる。真っ赤になって、ぐちゃぐちゃに歪んでいるはずだ。

「美和子……いつから、ここにいた……?」

彼は最後の望みを託している。でも残酷だが、正直に答えるしかない。

「ごめん。……ずっといた」

「嘘だろ……?」

「私に触ってたのも知ってる。寝たふりしてたの。……ごめんね」

「ちがう、あれはっ……」

すべて種明かしをした後で、彼の羞恥をひとつずつ解消していかなくてはならない。それには、この扉を開けてもらわなければダメだ。
顔を見て、頭を撫でてあげないと、久遠くんはひとりで塞ぎこんだままになる。

「久遠くん。大丈夫だから、ちょっと話そう?ドア開けて?」

二分くらい沈黙した。私がしぶとく待っていると、ドアは開かずとも、どす黒いトーンの返事がきた。

「………………無理だ。死にたい」

「そんなこと言わないで。こんなの普通のことだよ。全然恥ずかしくないって。……ほら、そもそも私がパンツ履いてなかったのが悪いんだし」

斜め上にずれたフォローを入れたが、ドアの向こうの彼は少し「それもそうだ」と思ったのかもしれない。呼吸が落ち着き始めている。
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