不埒な先生のいびつな溺愛 〜センシティブ・ラヴァーズ〜
「美和子……」

一分くらい、私は彼の髪を撫でていた。固くなったまま猫のようにピクピクと睫毛を動かす彼は、次第に緩み、紅潮していく。

こういう久遠くんが好きだ。刺が剥き出しになっているはずの彼は、私の手の中だけは、こうして柔らかくなってくれる。
私ももっと触れていたい。十二年分を埋めるくらい、可愛がってあげたい。

彼にはこういう雰囲気になるのを待っている素振りもちゃんとある。表情は切なくとも、この甘いタッチを心地良さそうに受け入れているし。

ただ、そこから先、何もしてこないというだけで。

「……久遠くん」

甘く名前を呼ぶと、彼は力を抜いて、ソファの背もたれに沈んだ。

「み、美和子……」

まるでお腹を広げた大型犬のように、久遠くんは迫る私に物欲しそうな瞳を向けて、続きを待っているようだった。
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