不埒な先生のいびつな溺愛 〜センシティブ・ラヴァーズ〜
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私たちの関係が揺れたのは、この数日後。
この日は久遠くんを連れて書店を数ヶ所回り終えたところだった。

彼が珍しくしっかりしたコートでよそ行きの格好をしているので、それを利用してカフェに連れていく。
最初に久遠くんの食べたいものを選んでもらってから、彼にはテラス席に座って待っているよう頼んだ。代わりに私が注文の列に並ぶ。

私は久遠くんからのエスコートは、未来永劫求めていない。
私のそばにいてくれればそれで良くて、今もそわそわと席からこちらに目線を配る彼にご機嫌で手を振った。
正直な彼のそばにいるだけで癒される。
それだけでいい。

「おまた、せ……」

マキアートをふたつ、お盆の上に乗せて席へと戻ると、テラス席に久遠くんだけでなく、女の人が座っているのが見えてきた。つい、足を止める。
若くて派手で、とても綺麗な人。
久遠くんはその人にほとんど背を向け、鬱陶しそうに苛立っている様子だった。

「どっか行けって言ってんだろ!」

「え〜、やだ、先生。私のこと忘れちゃったんですか〜?」

黒髪を平行に切り揃えたその女性は、大きな金のピアスを揺らしながら、隣の久遠くんに顔を近づけて迫っていた。
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