不埒な先生のいびつな溺愛 〜センシティブ・ラヴァーズ〜
「本当にやめろ。アンタのことなんか覚えてねぇ。……ここへは人と来てる。アンタにいられたら邪魔なんだよ」

ああ、そういうこと……。昔の女に絡まれてる、てところだろうか。
というより、久遠くんにとっては大勢の中のひとり、というか。気にしない、気にしない。

「おまたせ。どちら様?」

人の影に紛れていた私がテラス席に姿を現すと、久遠くんは焦った様子で席を立ち上がった。
私は冷静を装って、席にお盆を置き、入れ替わって席に座った。

「美和子っ、これはっ」

「久遠くん。マキアート冷めちゃうよ。大丈夫だから。……ね、座って」

慌てる彼の手をひとつ握ると、徐々に大人しくなった。私が冷静すぎるからか、彼の視線は不安定になっていく。
< 9 / 61 >

この作品をシェア

pagetop