私と彼の攻防記録
「本日から日烈社の方との連携プロジェクトが始まる。それで、アメリカの本社で勤務している、エキスパートの方に来てもらった。」
「神宮寺要君だ。」
その人が入ってきた時、空気感が変わった。
凛とした佇まいに、美しく整った顔立ち。ピシッと着こなすスーツに、目元にあるほくろ。
誰もが息を飲んだのがわかった。
「神宮寺要です。ニューヨークで三年間勤務しています、よろしくお願いします。」
「えぇ~、やばくない?容姿端麗、頭脳明晰、しかも性格も良さよう!」
「格好いい~、彼女にして!!」
「でもあれは絶対彼女いるでしょ。あの容姿でいないとかあり得ない。」
「それもそうだけどさあ、…。」
ごにょごにょと聞こえてくる女性の声。
『───誰かに、神宮寺君に社内を案内してもらいたいんだが。』
「はい!私が!!!」
「いやいや、ここは私が!」
「はい!私やります!」
あちらこちらから始まる女性の争いに、もう退散しようかと歩みを進めた時、
「あの、出来れば、小林さんにお願いしたいんですが、……。」
スッと通った低音に、ピシッと身体が固まる。
え、私??いやいや、聞き間違いだ、多分。そうじゃなきゃ、地味な私なんかに声をかけるなんてあり得ない。あり得な……
「え、あ、そうかそうか。それなら、小林君、頼んだよ。」
ぃぃいいい!!!
え、何で私なの??