私と彼の攻防記録
ザッ
俯いている私の前に、誰かが立った気がした。
誰かと見上げると、
「……神宮寺君。」
「な、何で?」
「小林さんの考案した製品は、真中さんの物と全く同じです。」
放たれた言葉と共に、ざわざわとざわめき出す会場。
「それでは、真中の考案を小林が奪ったということか?」
「まさか。皆さん、お気づきでしょうが、真中さんは毎回定時で帰宅していますね。それに比べ、小林さんは夜遅くまで残業しています。それに、先程の“誰にでも美しく見られたい”というコンセプトは、小林さんが長年考案してきた物と類似しています。」
「そうですよね、真中さん??」
ふいに名指しされ、まごつく真中。
「ち、違うわよ。私が考えた物よ!」
「ではどうして、貴方のパソコンに、小林さんのUSBが差し込まれていたのですか??」
「……ッ」
会場中の人の目が真中に集中する。
「そうよ!私がやったわ!嫌だったのよ!澄ました顔して、仕事が出来るなんて!!!だから私がその顔を歪ませてやりたかったの!!」
「……。」
「はい、皆さんお静かに。発表はこれで中断します。選考については後日連絡します。」