隣席 ー君と一瞬と蟠りー
そんなこんなで、展望台から見える景色を眺める。
「めっちゃ綺麗…」
心波と愛乃の声が彼方の向こう側から聞こえてきた。
「あそこゴミめっちゃ落ちてんね」
美玲の唐突すぎる言葉に私と優子は、あー、ね、と言い笑った。
優子が私の方をぽん、と叩く。
「柚奈〜、あそこ!君の好きな人いるよー」
優子が言った言葉に思わず彼女の指差した方を見ると、小田桐の姿が見られた。
「はい、いつもは見られない小田桐君のレアな私服姿をご覧あれ〜」
「ちょ、何言って!声大きいわ優子っ」
「あれれぇ〜、なに興奮しちゃってるのかな?柚奈ちゃ〜ん?あ、もしかしてー、かっこいいとか思ったりしててぇ?」
「ちげえって!!」
爆笑しながら私は言った。
確かに、優子の言う通り、いつもと違って爽やかなTシャツを着ている小田桐は、増してかっこいいと思った。
「耳、赤いよ〜」
優子の声が私の夢中を遮る。顔に出ているのかはよくわからなかったけれど、私の考えていることが彼女には全部お見通しなのか。まあ気の所為だよ、なんて嘘ついたけれど。