隣席 ー君と一瞬と蟠りー

彼女は、徐々に私の方に、無言で、近寄ってくる。
まるで、感情を失ったような、真っ暗い表情で。
ゆっくり、ゆっくりと。

“怖い”
“近くに来ないで”
“お願いだから”

心の中で私が力尽きそうに叫ぶ。
終わった。のだと思う。
私、何やらかしたっけ。

ねえ、心波。
何をするつもり、なの? その右手で、何をするつもり、なの?
引っ込んだかと思えば。
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