隣席 ー君と一瞬と蟠りー
やっと実験をする時間になった。
「なぁ、水上」
肩を突かれ、後ろを見ると湯下がいた。何、と聞くと耳打ちするように、
「森と浜口って今いい感じじゃん?」
と言われた。奴が指をさしている方を向くと、森と花愛が仲良さそうにやり取りをしていた。あの二人はそんなに知られてはいないけど、結構仲がよかった。もし彼らに好意というものが存在しているのならば、くっつけてやりたい…という妄想はさておき。
「だから俺らがさ、この辺で離れて様子見ようぜ」
「え、でもさ、そのあと森に色々言われるんじゃないの?」
「そんなの平気だって。それくらいは、ね?」
「うっ…じゃあ、いいかなー」
湯下の突然の提案に驚き、焦りつつ断ろうとしたが、見事に強制的にやらせられた。だからといって私の、森と花愛をくっつけたい、という願望はない訳では無い。寧ろ、くっつけてやりたいくらいだ。
さっきの妄想を、湯下も同じことを思っているんだと考えれば、ある意味仲間だなと感じた。
私はその一瞬から、湯下の〝奴〟扱いをやめようと思った。