隣席 ー君と一瞬と蟠りー
「もうあの二人付き合えばいいのにね」
湯下が言う。
「付き合う…ねぇ…お似合いだもんね」
付き合う、か。
確かに、この中学に入ってから、彼氏彼女の関係の人達が増えたような気もする。だが、意識するほどまではいかなかった。最近の中高生は、試しに付き合ってみたけどやっぱり気が合わない、なんて言って直ぐに別れてまた新しい相手を探す、という傾向が多い。まさにその通りだと思っている。
「何ぼーっとしてるんだよ、水上ってホント笑える」
シャーペンの先が止まっていた。そこから湯下に言われたのだろう。
「何だよ?」
怒っていないが、怒ったように言われて自己嫌悪になった。
「いや、なんでもない」
「ははっ」
「怒ってたんじゃないの…?」
「え?何が?」
「もーいいですってば」
お前が聞いてきたんだろ、と笑いながら湯下は向こうを向いた。
けれどすぐにこっちを見た。
言葉でコミュニケーションをとるのも飽きたので少しは顔で反応しようと、私は眉間に皺を寄せる。
湯下はニヤつく。
はぁ、と呆れた声を無意識に発すると、ふっ、と鼻で笑われる。
そんな日常も私は好きになった。