隣席 ー君と一瞬と蟠りー
“湯下 樹人” (ゆした みきと)

湯下…。
聞いたことも無い苗字だなぁ、と思いながら、私はメガネの位置を上にあげる。
天然パーマなのか、朝寝坊したのか分からないが、彼の髪の毛はハネていた。

私は、彼を中心に、周りの人の様子を見渡した。
その時既にクラスの8割は席に着いていた。
私のように周りをちらちらと見ている人、小学校の友達と同じクラスになって色々と話している人たち、寝ている男子、本を読んでいる人…。
皆それぞれ入学式に緊張を持っていないようだった。

その時、
「入学式が始まるので、廊下にならんでください」
入学生担当の3年生が言った。
皆も動き出している。私はその波に流されるように外に出た。
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