悪役令嬢の妹は自称病弱なネガティブクソヒロイン
ミハエル
「くそっ」
バンッ
ミロハイト侯爵家
長男のミハエルは部屋にあった椅子を怒りの蹴り上げた。
宙を舞った椅子はそのまま壁に激突し、木片が床に零れた。
職人が何か月もかけて作り上げた細かい意匠の椅子は無残な姿で床に倒れる。
ミハエルの部屋で待機していたメイドはその激しい音に怯えているがミハエルの眼中にはない。
「舐めやがって、たかだか伯爵家風情が」
婚約を破棄された。
見た目はとても良かった。
初めてセシルを見たのは夜会だった。
銀色の髪にルビーの瞳に真っ白な肌
此の世のものとは思えない美しさを持っていた。
だから父からこの婚約の話が出た時は直ぐに了承した。
だが、実際に会って話してみると女のくせに平気で男の私に意見をする。
仕事や勉強をサボると怒るし、真面目過ぎる。
一緒に居ると息が詰まる。
その点、グロリアは良い。
見た目はセシルに比べたら劣るがそれでも人並みに可愛い顔をしている。
自信がない分、私に逆らわないしとてもいいと思った。
良いと思うと色んなグロリアの可愛いところが見えてくる。
そうなると、セシルに対しての興味が薄れ、彼女の存在が煩わしくなる。
まさか婚約を破棄されるとは思わなかった。
何れこっちから願いでようとは思っていたが。
「兄上、少しは落ち着かれたらどうですか?」
勝手に部屋に入って来た弟のルーゼルは優雅にソファーに座り、メイドに勝手にお茶を頼んでいる。
「黙れ、出て行け」
「まぁまぁ。それよりグロリア・ラインネットへの婚約を考えているって本当ですか?」
「ああ。向こうから却下された」
「そしゃあ、そうでしょう。
幾ら何でも外聞が悪すぎる。
と、いうか何でグロリア?俺としてはセシルの方が良いけど。
グロリアはまぁ、可愛いけどさ。地味だし根暗じゃん。
それにあの子体が弱いんだろう?
だったら子供を産めないんじゃない?どうしたって跡取りは必要だよ。
兄上は侯爵家の嫡男だから」
「グロリアが体が弱いのは昔のことだ。
今は健常者と変わらん」
「え?そうなの?でも、滅多に社交界に出て来ないじゃない」
「あれはそういうのが苦手なんだ」
「それは困るよ。侯爵夫人としては致命的じゃない」
「別にそれぐらいできなくても問題ない。
必要なら教えればいい」
「ミハエル!」
父が物凄い形相で帰って来た。
「セシル嬢との縁談が破棄になったというのは本当か」
「ええ、本当ですよ」
「この馬鹿者っ!」
ドンッ
父が思いっきり殴って来た。
此れには殴られた本人だけではなく弟も驚いて、思わず立ち上がっていた。
「父上、何を」
「お前はセシル嬢の重要性を何も分かっていない。
あの子はまさに金の生る木だ。
あの子との婚約がある限り、我が家は伯爵家らの援助が受けられるだぞ」
「何を言っているのですか?援助、そんなものが我が家に必要なわけがない」
「父上、その話は本当なのですか?
俺も今初めて聞いたのですが?
それにセシル嬢が金の生る木どはどういう意味ですか?」
本当に何も知らない息子達に父は頭を抱えた。
「我が家は借金で首が回らない状態なのだ。
そしてセシル嬢は女性でありながら様々な事業をしている。
彼女と結婚すれば彼女の事業によって得られる収入が我が家のものにできるはずだったのだ。
それをお前は」
「そんな、まさか。何かの間違いだ」
「我が家は特に事業をしているわけではない。
だが、お前達や妻の高額な買い物は毎日のように行われている。
このままでは我が家はお終いだ」
「ご安心ください。ならもう一度婚約を結べばいい」
「できると思うか?お前はグロリア嬢と不貞を働いたのに?」
「それは」
「では父上、俺ならどうでしょう?」
父は弟のルーゼルをじっと見て自棄になっているのか投げやりに「好きにしろ」と言って部屋から出て行った。
バンッ
ミロハイト侯爵家
長男のミハエルは部屋にあった椅子を怒りの蹴り上げた。
宙を舞った椅子はそのまま壁に激突し、木片が床に零れた。
職人が何か月もかけて作り上げた細かい意匠の椅子は無残な姿で床に倒れる。
ミハエルの部屋で待機していたメイドはその激しい音に怯えているがミハエルの眼中にはない。
「舐めやがって、たかだか伯爵家風情が」
婚約を破棄された。
見た目はとても良かった。
初めてセシルを見たのは夜会だった。
銀色の髪にルビーの瞳に真っ白な肌
此の世のものとは思えない美しさを持っていた。
だから父からこの婚約の話が出た時は直ぐに了承した。
だが、実際に会って話してみると女のくせに平気で男の私に意見をする。
仕事や勉強をサボると怒るし、真面目過ぎる。
一緒に居ると息が詰まる。
その点、グロリアは良い。
見た目はセシルに比べたら劣るがそれでも人並みに可愛い顔をしている。
自信がない分、私に逆らわないしとてもいいと思った。
良いと思うと色んなグロリアの可愛いところが見えてくる。
そうなると、セシルに対しての興味が薄れ、彼女の存在が煩わしくなる。
まさか婚約を破棄されるとは思わなかった。
何れこっちから願いでようとは思っていたが。
「兄上、少しは落ち着かれたらどうですか?」
勝手に部屋に入って来た弟のルーゼルは優雅にソファーに座り、メイドに勝手にお茶を頼んでいる。
「黙れ、出て行け」
「まぁまぁ。それよりグロリア・ラインネットへの婚約を考えているって本当ですか?」
「ああ。向こうから却下された」
「そしゃあ、そうでしょう。
幾ら何でも外聞が悪すぎる。
と、いうか何でグロリア?俺としてはセシルの方が良いけど。
グロリアはまぁ、可愛いけどさ。地味だし根暗じゃん。
それにあの子体が弱いんだろう?
だったら子供を産めないんじゃない?どうしたって跡取りは必要だよ。
兄上は侯爵家の嫡男だから」
「グロリアが体が弱いのは昔のことだ。
今は健常者と変わらん」
「え?そうなの?でも、滅多に社交界に出て来ないじゃない」
「あれはそういうのが苦手なんだ」
「それは困るよ。侯爵夫人としては致命的じゃない」
「別にそれぐらいできなくても問題ない。
必要なら教えればいい」
「ミハエル!」
父が物凄い形相で帰って来た。
「セシル嬢との縁談が破棄になったというのは本当か」
「ええ、本当ですよ」
「この馬鹿者っ!」
ドンッ
父が思いっきり殴って来た。
此れには殴られた本人だけではなく弟も驚いて、思わず立ち上がっていた。
「父上、何を」
「お前はセシル嬢の重要性を何も分かっていない。
あの子はまさに金の生る木だ。
あの子との婚約がある限り、我が家は伯爵家らの援助が受けられるだぞ」
「何を言っているのですか?援助、そんなものが我が家に必要なわけがない」
「父上、その話は本当なのですか?
俺も今初めて聞いたのですが?
それにセシル嬢が金の生る木どはどういう意味ですか?」
本当に何も知らない息子達に父は頭を抱えた。
「我が家は借金で首が回らない状態なのだ。
そしてセシル嬢は女性でありながら様々な事業をしている。
彼女と結婚すれば彼女の事業によって得られる収入が我が家のものにできるはずだったのだ。
それをお前は」
「そんな、まさか。何かの間違いだ」
「我が家は特に事業をしているわけではない。
だが、お前達や妻の高額な買い物は毎日のように行われている。
このままでは我が家はお終いだ」
「ご安心ください。ならもう一度婚約を結べばいい」
「できると思うか?お前はグロリア嬢と不貞を働いたのに?」
「それは」
「では父上、俺ならどうでしょう?」
父は弟のルーゼルをじっと見て自棄になっているのか投げやりに「好きにしろ」と言って部屋から出て行った。