雪の光


計算したようなタイミングでこんなことが書かれている。


もしかしたら、彗は自分がもうすぐ死ぬとでも予感していたのだろうか。


それとも、誰かに殺されることを覚悟して生きていたのだろうか。


床にぱたぱたと水が落ちる。


「……っ……」


もうこれ以上考えられなかった。


ごまかせなかった。


涙が次から次へと頬を伝って落ちてくる。


「……っ……彗っ……!」


私は気付いていないだけで彗をすごく大切に考えていた。


彗も同じで、気付いていないだけで本当は大事にしていた。


……大事にされていたんだ……。


「……ありがとうっ……」


生きている間にもっと言えたら良かったのに。


生きている間に笑えたら良かったのに。


生きている間に思いを知ってあげられたら良かったのに。


生きている間に「大事だよ」と言えたら良かったのに。


生きている間に好きだと知ることが出来たら良かったのに。




生きている間に。



< 125 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop