雪の光


「……ば良かったのに」


ぼそっと聞こえた。


ほとんどの人は気付いていないけれど、私を含めた数人は耳を澄ました。


「…………のよ」


何を言っているかはよく聞こえないけれど、私に対してだと思う。


「死ねばよかったのに」「なんで生きてんのよ」


そんな言葉だと思う。


何度も自問自答しても分からない問い。


他人に問われたら泣き叫んでその場のものを全てぐちゃぐちゃにしてしまうと思っていたのに、実際は体が硬直しただけだった。


彗に大事にされていたという事実があっても、それすら超えてしまうほど、私にとっては重い問いなのだ。


どうしようもなく、目の前に置かれたご飯を見つめていると職員の人がやって来た。


「ご遺体を焼き終わりましたので、今から骨を取ります」


その言葉を合図にみんなが一斉に席を立ってその部屋に向かう。


泣き出す人もいれば、覚悟したような顔の人もいた。


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