雪の光


「犯人、懲役40年だって」


去り際に茜ちゃんが呟いた。


そのまま行ってしまう。


犯人のことなんて、考えていなかった。


彗が死んだ事実は、犯人が捕まっても、刑務所に入っても、死刑になっても、何も変わらない。


それでも思ってしまう。


放火と殺人でたった40年なの?って。


他人の事件なら、犯人だって犯人なりの理由があるのだと思えるけれど、自分に近い人が死ぬと、こんなにも理性が効かなくなる。


理性に酔っていた自分を酔いから覚ましてしまう。


考えているうちに骨のある部屋に来た。


ドアが開くと、少し焦げ臭かった。


ゆっくり歩いていくと、骨だけの彗がいた。


当たり前のことが、こんなにも冷たく見えるなんて。


本気で世界が色を失ったと思った。


すすり泣く声も、お骨を拾う箸の音も、何か話す声も、水の中にいるように、輪郭が曖昧に聞こえる。


遠くで茜ちゃんが彗の骨を壺に入れている。


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