雪の光




全て終わると、疲れた。


長い1日だったようで時間はあっという間に過ぎた。


空はもう、端の方に濃いオレンジ色を残すだけだった。


挨拶をして帰ろう。


茜ちゃんの家族に向き直る。


「今日はありがとうございました」


頭を下げながら思う。


『ありがとうございます』とは、なんと都合の良い言葉か。


この一言を言えば、その場が丸く収まってしまう。


理由も分からずにただ使った。


「いいのよ、こちらこそありがとう。

来てくれてとても嬉しかったです。

彗くん、きっと喜んでいるわ」


そう言う茜ちゃんのお母さんは少し涙ぐんでいる。


「茜、見送れる?」


「……ん」


それから無言で私をロビーに連れて行く。


「……二度と来ないで。

墓参り、あんたには絶対に行かせない」


最後に言われる。


「……分かった」


口で言うのはとても簡単だった。


彗の命、こんなに軽いものじゃないのに。


口の中を噛む。


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