雪の光


「……じゃあ、気をつけて」


「うん」


初めて言葉で心配された。


それが嬉しかった。


お邪魔しました、と言って急いで家に帰る。


来た時よりも速く走ったと思う。


ばたん、とドアを閉めるとお母さんが驚いて「何してるの?」と言った。


「なんでもない」とだけ答えて部屋にこもった。


メモを広げる。


私は知っている。


この言葉の意味を。


ひとつは文章の通りだ。


もうひとつは、




愛している、という意味。


もしかしたら、彗は月の綺麗な夜にこの言葉を書いたのかもしれない。


でもそれでは辻褄が合わない。


だって彗は気持ちが分からないのだから。


だとすれば、もう意味はひとつしかない。


都合の良い解釈だと言われればそれまでだけれども、私はそう思った。


涙が溢れた。


『愛している』


ドラマや漫画で何度も見て聞いてきたこの言葉が、こんなにも心に響くことは初めてだった。


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