雪の光


ああ私、こんなにも素敵な人に大事にされていたんだ。


きっとこれを見たら彗は、「泣いてる自分に自惚れてんのかよ」なんて憎まれ口を叩くかもしれない。


それでも、私は嬉しかった。


「ありがとうっ……」


そう言わずにはいられないほど。


「……ありがとう、彗」


何度も何度も読み返す。


『月が綺麗ですね』


偶然か必然か、この言葉は私の好きな言葉だ。


誰にも言ったことはなかった。


いたいヤツと思われて終わりだと思っていたから。


言ってくれるなら、言えばよかったよ。


「……んだよ、……せ、い……」


言おうとしたのに、言葉にならない。




見てる?彗。


今日、満月だよ。


本当、月が綺麗だよね。




もしも。


もしも彗が今生きていたら。


もしもあの時の私達に気持ちがあったなら。


もしもイルミネーションをもう一度見られたなら。


もしも一緒に帰らなかったら。


< 154 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop