雪の光
もしも私が線路に飛び込もうとしなかったなら。
もしも彗に止められなかったなら。
もしも私のヴァイオリンを聴いていなかったなら。
もしも運良く私が死んでいたなら。
きっと私達は出会わなかった。
どんな小さなことでも欠けていたら、私達は出会わなかったのだ。
そんなことを彗が死んでから毎日思っていた。
眠れない夜も、部長に怒られた日も、友達と飲んだ日の帰り道も、ヴァイオリンを弾いた夜も、仕事が上手くいった日も、鍵を落とした日も、転んだ日も、どんな日も、考えないことがなかった。
「……寂しかったんだよ」
ぽつりと呟く。
でも、今はもう寂しくない。
何となく、彗も同じ月を見ているように思うのだ。
ただ星屑に変わっただけで、彗がいた証は残っているのだ。
これから先、眠れない夜が何度あるか分からない。
疲れて死にそうになることだってあるかもしれない。