雪の光
「……そうだよな」
「……ごめん、押し付けた」
「意見、少しは言えよ」
「……うん」
少しだけ温かみを含んでいる気がした。
彗は気付いていないかもしれないけれど、感情がこもっている。
感情、出せているよ。
「……明後日がクリスマスなんだな」
「早いね」
「……昔、雪が欲しいってサンタさんにお願いしたんだ」
「へえ」
私たちの後ろをサラリーマンや学生が通り過ぎる。
「そうしたら、クリスマスの朝に本当に雪が降っていたんだ」
「凄いね」
「それが感情を理解できた最後」
「……今は、もう覚えていないの?」
「忘れた。人ってこんなに忘れっぽいんだって驚いた」
あまりに無機質であっけらかんとしていた。
感情?それって美味しいの?ってくらいに何も覚えていないらしかった。
私もいつかそうなるのだろうかと空を見上げると、一番星が瞬いていた。