雪の光
「……最近、心臓のあたりが痛むんだ」
ゾクッとした。
「……何それ、……病気?」
怖いのだ、彗が消えてしまうのが。
いつの間にか、私は彗を頼りにしていたのだ。
「たぶん違う。
何か温かいことを考えていると、心臓が痛いんだ。
……だけど、嫌じゃない」
噛み締めるように言う。
私はそんな気持ちは経験したこともなく、よく理解できない。
「分からなくて、調べたんだ」
「なんて出てきたの?」
「恋、だってさ。
……あれ、なんだろう、また痛い。」
……彗が。あの、千夏がいつもしている恋を。
「……誰に?」
「侑里に、だよ」
呑気にクリスマスの音楽が遠いところで流れている。
彗の言葉以外に私の耳は何も通らない。
初めて『笑う』という行為をしたかのようにぎこちなく笑った。
「……ありがとう、私に恋してくれて」
目の前に、少しでも触れたら消えてしまいそうな微笑みが浮かんでいる。