雪の光


「まだ分からないの?馬鹿だね」


その時、アイリはバケツを持ち上げて、私の頭上に落とした。


世界が歪んだ、と思っていると、次の瞬間何かが顔を伝っていた。


ガッシャーンと派手な音がして、それでようやく我に返る。


「アハハ、ばっかじゃないの!

ずっと見上げているとか、頭おかしいでしょ!」


「やっぱりこいつは馬鹿だったー」


「後片付けよろしくね、美術でここ使うらしいから」


ばたん、とドアが閉まる音を聞いた時、動かしてもらえなくなったあやつり人形のように床に座り込んだ。


……私、何かした……?


何が問題で、何が問題じゃないの?


私を中心に、水が流れる。


なんで水なんか被っているの……?


そこまで考えたところで、無気力になった。


全部どうでもいい。


そうだよ、このまま私は死ねるんだ。


こんな真冬に水被って薄着でいれば、本当に死ねる。


凍死なんて少しださいけれど、それでも死ねるなら構わない。


< 81 / 157 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop